「大学生になったらアルバイトやインターンでバリバリ稼ぐぞ!」と思っている方も多いかと思います。でも、ちょっと待ってください。「扶養控除」という税金の仕組みを知っていないと、アルバイトやインターンで稼ぎすぎることで自分や親が払う税金が大きく増えてしまう可能性があるのです。
稼ぎすぎると税金をいっぱい取られてしまうというのは何とも言えない気持ちになりますが、これから大学生が知っておくべき税金知識について解説しますので、働き方や稼ぐ金額の参考にしてください。
この記事の目次
扶養控除とは
「扶養」とは家族を養うこと、「控除」とはある金額から一定の金額を差し引くことになります。「扶養控除」は、働く親が養っている家族の人数に応じて所得税や住民税といった税金の負担を軽くするための制度になります。
ここで「収入」と「所得」の違いについても説明します。「収入」とは、働いて得た給与や賞与の合計金額のことです。「所得」は、年間の収入の合計額から「給与所得控除(65万円)」など、控除額を差し引いた後の金額になります。
そして、その人の置かれる状況に応じて不公平が生じるのを防ぐために、稼いだ金額から一定の金額を差し引いた金額=「所得」に応じて課される税金が「所得税」になります。
控除の種類には、スーツ代など働く上で必要になるであろう経費を差し引く「基礎控除」や、家族の収入や人数に応じて金額を差し引く「配偶者控除」「扶養控除」などといった制度があります。
なので、同じ年収400万円の人でも一人暮らしの場合と家族がいる場合では、支払う税金が異なります。家族がいると、その分生活にお金がかかるので「配偶者控除」や「扶養控除」が適用され、収入からの控除額が多くなります。そうすると税金計算の対象になる所得が少なくなり、課される所得税も減る、ということです。
扶養控除の対象になるのは、生計を一緒にしている配偶者以外の親族
扶養控除の対象になるのは、子どもや里子など、生計を一緒にしている配偶者以外の16歳以上の親族になります。生計を一緒にしていると言っても同居している必要はなく、一人暮らしの大学生で仕送りをもらっている場合でも適用されます。
扶養控除の対象になるためには、年間収入を103万円以下にする必要がある
扶養控除の対象になるためには、「所得」が「38万円以下」である必要があります。アルバイトやインターンなど給与所得で稼ぐ場合は、年間の「収入」を「103万円以下」にしなければなりません。
「103万円」というのは、扶養控除対象の所得の上限「38万円」と、給与所得控除「65万円」を足したものになります。年収161万9千円未満の人は、給与所得控除として自動的に65万円が差し引かれます。
103万円以上稼ぐと、給与所得控除65万円を差し引いても所得が38万円以上になってしまうので、扶養控除の対象から外れてしまいます。
「103万円の壁」という言葉をニュースなどで耳にしたことがある方も多いと思いますが、その背景は扶養控除の対象所得と給与所得控除の金額にあるのです。
ちなみに103万円は、自由に使える手取りの金額ではなく、税金や雇用保険などを差し引く前の額面の金額です。年間103万円稼ぐ場合は、月平均「約8万6千円」になります。アルバイトやインターンで稼ぐ際の目安にしてください。
一点注意すべきなのが、アフィリエイトや株などを使い自力で稼ぐ場合は、雑所得となり給与所得になりませんので、「給与所得控除」の65万円が差し引かれなくなります。
雑所得の場合も扶養控除対象の上限額は38万円ですが、仕事にかかった経費のみを差し引くことになりますので、実際に扶養の範囲内で稼げる金額は給与収入の場合よりも少なくなります。アフィリエイトや株などで得た所得が年間38万円を超えた場合は、確定申告が必要になります。
扶養控除対象額以上に稼ぐと、親が支払う税金が増えてしまう
親は、家族を養うという立場にいることで、扶養控除を受けて税金の負担を減らしています。もし扶養対象のはずだったあなたが、年間103万円以上稼いで扶養の対象から外れた場合、親はどれだけ税金の負担が増えてしまうのでしょうか。
あくまで目安ですが、それぞれの年収の場合以下程度の税金が増えてしまいます。
- ~527万円:10万8千円の増税(所得税:6.3万円+住民税:4.5万円)
- ~947万円:17万1千円の増税(所得税:12.6万円+住民税:4.5万円)
- ~1,166万円:18万9千円の増税(所得税:14.4万円+4.5万円)
親の手取りが10万円~20万円程度減ってしまっては、家計への影響も大きくなってしまいます。
扶養の範囲内で働く場合は稼ぐ金額が103万円を超えないように注意してください。親の扶養を外れる場合は、勝手に行動するのではなく必ず親と話し合うようにしましょう。
勤労学生控除とは
生活費を稼ぐ学生のために「勤労学生控除」という制度があります。「勤労学生控除」を適用すると、年間の収入「130万円」までなら自分で支払う税金を非課税にすることができます。
「103万円の壁」以上に稼ぐことはできますが、扶養からは外れてしまうので親の税負担は増えてしまいます。ここからは、勤労学生控除のメリットとデメリットを紹介いたします。
勤労学生控除とは
勤労学生控除に申し込むと、年間の収入「130万円」まで稼いでも所得税がかからなくなります。
130万円(給与収入)―65万円(給与所得控除)―38万円(基礎控除)―27万円(勤労学生控除)=0円(所得)となり、所得が0円になるためです。
しかし、親の扶養からは外れるので、自分自身が基礎控除(38万円)の対象になる代わりに、親は扶養控除(38万円)が差し引かれなくなるため、親の税金負担が増えることになります。
勤労学生控除の対象となる条件
勤労学生控除の対象となるには3つの条件があります。
(1)給与所得など勤労による所得があること
アルバイトやインターンなど、企業から給与をもらう形で働いて所得を得ている必要があります。短期のアルバイトや派遣でも問題ありません。
(2)合計所得金額が65万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
合計所得金額は、収入から給与所得控除などを差し引いた金額のことです。収入が130万円以下であれば、給与所得控除(65万円)を差し引いた所得が65万円になるため、勤労学生控除の対象となります。
給与所得以外の所得が10万円以下である必要があるので、アフィリエイトや株などで稼ぐ収入は10万円以下に抑える必要があります。
(3)特定の学校の学生、生徒であること
高校や大学、専修学校や職業訓練を受けている人が控除の対象になります。ただし、語学スクールや趣味の習い事などは対象外になります。不安な場合は学校に問い合わせてみましょう。
勤労学生控除の申請方法
勤労学生控除を適用する場合は、次のどちらかの方法で申請する必要があります。
(1)勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する
(2)確定申告書に勤労学生控除に関する事項を記載して提出する
なお、専修学校や各種学校に通っている場合は、その証明書を添付して提出する必要があります。
勤労学生控除のメリットとデメリット
メリットは、税金を納める必要のない収入額が103万円から130万円に引きあがることです。親からの仕送りは最低限に留め、自分で稼いでいくという人にはおすすめです。
デメリットは、親の扶養から外れるので親の税金の負担が増えてしまうことです。自分自身は130万円まで非課税になりますが、家族単位で見ると年間の手取り額が10万円~20万円程度減って損することになります。
また、アルバイトを掛け持ちしている場合は税務署が全体の収入額を把握できないので、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告を行わないと脱税になってしまいます。
このように、勤労学生控除は自分だけでなく親にも影響するものなので、必ず話し合った上で判断するようにしてください。
まとめ
親が扶養控除を得ることによって、家族全体で節税対策ができています。よっぽどのことがない限りは、大学生の内は収入を扶養範囲内の103万円に抑えて稼いだ方が無難です。
せっかくの大学生活ですので、働くばかりでなく旅行をするなど好きなことに時間をつかうのもいいものです。また、大学生の内からガッツリ稼ぎたいという方は、しっかりと親を説得して扶養から外れて、自立した生活ができるぐらい稼いでしまいましょう。そうすれば、親も納得してくれるはずです。扶養控除の仕組みを理解して、自分の生活にあった稼ぎ方を考えてみてください。