この企業で募集中の長期インターン
僕がインターンをしているSCIENは、東大・松尾研究室発のスタートアップの一社です。 社名は “Science” が由来で、「良いサイエンスをできるだけ早く社会に届けたい」という思いから立ち上がった会社です。世の中には面白い研究や技術がたくさんあるのに、現場に届くまでに距離がある。そのギャップを埋めるために、企業の課題に合わせたAIの受託開発を行っています。 僕がSCIENで働いている理由は、会社のミッションに惹かれたことに加えて、研究室の先輩だった代表である田端さん・大山さんの存在が大きいです。技術力はもちろん、人としての在り方も尊敬できる方々で、「この人たちとなら全力で取り組める」と思えたことが、自分がここでチャレンジしてみようと思った決め手でした。
SCIENは受託でAI開発を行っている会社なので、まずはお客様のもとに伺い、どんな課題を抱えているのかをヒアリングするところから仕事が始まります。 社内には「技術を理解した人がフロントに立つ」という文化があり、僕もその立ち位置で打ち合わせに参加しています。肩書きは「機械学習エンジニア」ですが、仕事内容としてはほぼ営業に近いですね。 課題を伺ったあとは、それを踏まえて「このAIの使い方が現実的です」「こういう技術の組み合わせなら解決につながりそうです」と、技術的な視点から提案していきます。単に“営業として話す”というより、研究で培った知識や実装経験を使いながら、お客様の言葉を技術に翻訳していくイメージが近いです。
クライアントは本当に幅広いです。特定の業界に絞っていないので、大手上場企業の製造業もあれば、医療・介護系の企業、公共・自治体など、「AIに興味がある」という共通点だけで業界がバラバラなんです。 オンラインでのミーティングもあれば、対面で伺うこともあって、忙しい日は1日に3件ほど打ち合わせが入ります。お客様ごとに知識も前提も全然違うので、毎回こちらも頭を切り替えて説明方法を変える必要があります。 正直、「エンジニアなのに、ここまでお客様の前に出れるんだ」と最初は自分でも驚きました。でも、その分いろんな業界の課題に触れられるので、毎回学びが大きいです。
詳細はお伝えできないのですが、最近だと医療・介護領域のお客様とのプロジェクトに関わりました。お客様からは、業務の一部をデジタル化し、より効率的に運用できるようにしたいというご要望がありました。 僕はそのプロジェクトの最初のヒアリングから参加しました。事前資料はあったものの、「何を最優先で実現したいのか」や、「すでにできているとされている部分の実態」は、実際にお話を伺って初めて見えてくることが多くて。しかもヒアリングは一度きりなので、その場で要件を固め切らなければならないというプレッシャーもありました。それでも、お客様の課題感を丁寧に紐解き、潜在的なニーズまで言語化していくプロセスは大きな学びで、この仕事の醍醐味でもあります。 ヒアリングが終わった後は、社内での議論が一気に濃くなります。代表と先輩と僕の三人で集まって、「どのデータベースを参照すべきか」「利用者さんが迷わないチャットボットの流れはどんな形か」「施設側のオペレーションはどう変わるのか」など、細部まで突き詰めていきました。気づけば夜まで議論が続く日もありましたが、お客様の漠然としたイメージを具体的な提案に落とし込んでいくプロセスは、とても印象に残っています。
営業って、座学だけではどうにもならない領域なんですよね。だからとにかく、“教わりながら実践する” を繰り返してきました。 代表の田端さんや大山さんは、僕が入る前は二人で営業もエンジニアも全部担当されていた方たちで、提案の組み立て方も、お客様との向き合い方も本当に圧倒的なんです。その隣で自分の営業の様子を見てもらいながら、毎回フィードバックをいただける環境はすごく恵まれていました。
最初の3ヶ月は、正直うまくいかないことの連続でした。というのも、初めのうちは代表が初回や二回目の打ち合わせを担当してくださっていて、要件がある程度整理された状態から僕が「提案パート」を引き継ぐことが多かったんです。前提がそろっていれば、これまで研究やインターンで培ってきた技術的な知識を生かして比較的スムーズに提案に落とし込むことができました。 ただ、3ヶ月ほど経つと僕も“初回営業”を任されるようになって、状況が一気に変わりました。お客様自身もまだ課題を整理しきれていない状態で話が始まることが多く、ヒアリングしたつもりでも、次の打ち合わせの終盤になって「実は本当にやりたいことは……」と出てくることがあるんです。そのたびに、「これは最初の場で引き出すべきだった」と反省していました。 そこからは、とにかく毎回振り返りを積み重ねました。「何を聞き落としていたのか」「どんな仮説を持って臨めばよかったのか」。それを一つずつ整理していくうちに、少しずつですが、お客様の“本音”を引き出すための視点が育っていったように思います。
振り返ってみて、特に成長を感じるのは「技術以外の力」です。もともとエンジニアリングやAIの知識は、研究や他のインターンを通じて身についていましたが、SCIENではまったく別のスキルが鍛えられました。 たとえば、相手に伝わる言い方を選ぶこと、言葉の裏にある“本当の困りごと”を読み取ること、限られた時間で論点を整理すること。こうした力は、実際にお客様と向き合う現場に出て初めて必要性を実感したスキルです。そして何より大きかったのは、技術を「社会で使うもの」として捉えられるようになったことだと思っています。 研究室で身につけた知識に、業務フローや現場の制約という“現実”が重なり、「あ、これは現場に出なければ気づけなかったな」と感じる機会が増えました。 技術的には簡単でも“現場に合わなければ意味がない”。反対に、難しいアプローチでも“お客様の流れにフィットすれば価値になる”。こうした“使える技術”を見極める判断軸は、提案の場に立ったからこそ身についたものだと感じています。
よく「どれくらいの技術力が必要ですか?」と聞かれるんですが、SCIENには学部1年生で入ってきた人や、「数学はやってきたけど、AIの実装はこれから」という人もいます。もちろん、AIやエンジニアリングへの興味や基礎的な知識はあった方がいい。でも、それ以上に大事なのは、「自分で考えて、自律的に動けること」だと思います。 今はChatGPTをはじめとしたツールもあって、知識自体は自分でいくらでもキャッチアップできます。大事なのは、「新しい技術が出てきたときに、自分で触ってみる実行力」と「なぜこう動くのかを考える思考力」。SCIENの技術面接でも、そういう部分をよく見ていると感じます。 「この分野で働きたい」「AIで社会の課題を解きたい」という熱意がある人なら、きっと楽しく働ける環境です。
働き方はかなり柔軟です。今はリモートワークが中心で、週1回ほどオフィスに行くくらい。決まっているのは、先方との打ち合わせや社内ミーティングの時間だけで、それ以外は基本的に自分で働く時間を調整できます。深夜に作業しているメンバーもいれば、朝の静かな時間に集中している人もいて、「自分のリズムで働く」ことが当たり前になっている環境です。 僕は営業としてお客様対応をしているので、どうしても平日日中は打ち合わせでスケジュールが埋まりがちですが、それでも大学院の研究とは両立できています。修士になると授業より研究室の時間が中心になり、コアタイムがない研究室であれば、自分の動きやすいように一日の流れを設計できるのも大きいです。 週の稼働は2日程度のことが多いものの、週5日フルで入る週もあります。分野が近いこともあり、SCIENでの仕事がそのまま研究のアイデアにつながることもあって、「大学と仕事のどちらかを選ぶ」ではなく、むしろ 二つの世界が互いに刺激し合っている ような感覚があります。 こういう働き方ができるのも、個人の裁量を尊重してくれる会社だからこそだと感じています。
インターンは卒業まで続ける予定です。もちろん、僕自身が受注を取ることも目標の一つですが、それ以上に「後輩を育てたい」という気持ちがあります。僕が残り3ヶ月で1本取るよりも、後輩の二人がこの先1年で1本・2本と案件を取れるようになる方が、会社にとってのインパクトは大きいはずだと感じています。 だからこそ、自分のノウハウを言語化して渡したり、一緒に打ち合わせに入ってフィードバックしたりしながら、「技術営業ができる人」を増やしていくことも、今の僕の仕事だと思っています。 また、社会人としての長いキャリアの中で、どの環境にいても「入社1日目のような好奇心を忘れない」ことを大事にしたいです。業務が回るようになると、学ばなくてもなんとかなる瞬間が必ず来ます。そこで止まらず、新しい知識や技術に手を伸ばし続ける自分でいたいなと思っています。
営業を通じていろいろな会社の方と話していると、「社会ってこんなに課題にあふれているんだ」と実感します。そして、その課題を解決するための技術は、多くの場合、今みなさんが大学や大学院で学んでいる内容とどこかでつながっています。 「社会の課題を、自分の手で解決してみたい」もし少しでもそう思うなら、インターンという形で一度“本物の現場”に飛び込んでみるのは、すごく良い選択だと思います。 「課題のある現場」と「自分の技術」をつなぐ経験は、きっとその後のキャリアに大きな影響を与えてくれるはずです。迷っているなら、まずは一歩踏み出してみてほしいなと思います。