- 社名:パスロジ株式会社様
- 設立:2000年02月24日
- 従業員数:53名(2025年7月末時点)
- 学生インターン:16名(2025年7月末時点)
- 事業内容:独自の認証・セキュリティ技術を開発・提供
- お話を伺った方:技術部所属/インターン管理担当 SE 瀧澤 元信 様
(2025/8月時点)
採用戦略の見直しから始まった、長期インターン導入の背景
-長期インターンを導入しようと思われた最初のきっかけは何でしたか?
社長の発案です。社長仲間から「インターンって結構仕事してくれるよ」と聞いたのがきっかけです。そこから「うちもちょっと始めてみようか」となりました。中途採用の応募が少なかったり、応募があってもスキルマッチングが難しいようで採用に苦戦していました。
そこで、弊社の環境にあう「新しいことに前向きに取り組める人材」に出会いたいという思いから、学生に適性があるのではないかと考えました。将来的に会社の規模を拡大していく中で、新卒採用も考えなければという背景もあり、柔軟な採用の在り方を模索する中で学生インターンという選択肢にたどり着きました。
学生の可能性を見抜く──情報系に限らない採用基準
-ゼロワンインターンを通じての学生の応募数や質はいかがでしたか?
応募数は非常に多いです。特に4月やゴールデンウィーク前後などのタイミングは応募が集中します。逆に12月は少ないです。ゼロワンインターン経由では、情報系の学生が7割、経営・経済系など非ITの学生からは2割の応募がありました。
-情報系・非情報系を問わず、学生の見極めで重視されているポイントは何ですか?
もちろん情報系には多少のアドバンテージはありますが、それほど大きな差ではないという印象です。
経営学部や文系など情報系以外の分野から来る学生は、そもそもITに強い関心があるからこそ、わざわざ応募してくるんです。
そういう学生は学部関係なく行動力があるし、学ぶ意欲も高い。だから結果的に成長が早く、非常に頼もしい存在になります。
「技術が本当に好きかどうか」、そこが大きな違いを生んでいると感じますね。
学部はあくまで背景の一部であって、それよりもどれだけ熱意を持って取り組めるか、自ら学ぼうとする姿勢があるかを重視しています。
ですから、技術の話になると目の色が変わるかどうかがポイントです。
-採用の面談では、どんな質問をされていますか?
「趣味は何ですか?」という質問は必ずします。プライベートに夢中になれるものがある大学生の方が、コミュニケーションも取れますし、目標意識もはっきりしている傾向があります。
「任せて育てる」──インターン生の自立を支える環境設計
-インターン生を受け入れる際、何か体制を整えられましたか?
明確な研修制度は設けていません。その代わり「お金と機会は与えるから、自立して成長してね」というスタンスです。
ただ、学びやすい環境づくりは常に意識しています。
例えば、書籍などはインターン共有の財産として購入しますし、エンジニア社員が日常的に相談に乗るような関係性を自然に築けるよう工夫しています。
また、過去にはKPT(振り返りのフレームワーク)を定期的に開催したり、学生発案でLT(ライトニングトーク)も行ったりしています。学生同士のつながりを深めるための取り組みも大切だと感じています。
-インターン生同士の交流やコミュニケーションは、なぜ重要だとお考えですか?
以前、インターン生向けの匿名のアンケートで「インターン同士の交流をもっと増やしたい」という声がありました。
中には、プロジェクト内で一人しかインターン生がいないというケースもあって、そうなると関わるのは社員だけ。学生としては少し寂しく感じてしまうこともあると思うんです。
インターン生が別々のプロジェクトに配属されていると、お互いに接点が少なくなってしまうので、インターンチームの業務の可視化や、問題意識の共有を意識的に行うことが必要だと考えました。
チーム開発では、心理的障壁があると課題が見過ごされてしまうので、発言しやすい環境を整えることが大事です。
あとは、インターンシップ期間中は、社員との関わりだけじゃなくて、学生同士のつながりも大事だと思います。もちろん学生ですから、仕事だけじゃなくて、楽しんでもらいたいという気持ちもあります。
-学生同士や社員との関係づくりで工夫されていることは?
学生と一緒になって考えることを大切にしています。自分もすべてを知っているわけではないですし、学生から出てくるアイデアの中には「それいいね」と思うものもたくさんあります。
上からの立場で接してしまうと、自分では気づけないような良い意見を潰してしまう可能性もあるので、基本的にはフラットな関係で接するようにしています。
雰囲気づくりに関しては、雑談も含めて積極的に話しかけるようにしています。
-インターン生に業務を任せる際、どのような工夫やスタンスを大切にしていますか?
当社は学生からの意見を積極的に歓迎する雰囲気があります。むしろ「意見を出さない方が良くないよね」と伝えていますし、インターン生にもどんどん発言してほしいと思っています。
「こういうことを期待してるよ」とか、「信じて任せています」といったスタンスを示すことで、学生も責任感を持ってくれるのではないかと。
細かく指示を出しすぎると、逆に自分で考えなくなって、ただの作業者になってしまう。そうならないように、自主性を引き出す任せ方を心がけています。
-勤務体制やシフト面で苦労されたことはありますか?
学生は出勤が不安定なため、チーム開発がしづらい点はあります。
IT企業であればどこでも使っていると思いますが、Gitを使ってチケット管理を徹底しています。
あとは、コミュニケーションツールとしてメールは使わず、Discordでチャット形式のやり取りをしています。プロジェクトごとにチャンネルを立てて、必要な引き継ぎなどもそこに書き込むようにしているので、気軽に相談できる環境になっています。
また、学生の中には自宅が遠かったり、大学のスケジュールが忙しい子もいるので、30分単位でテレワークをOKにしています。中にはミーティングだけ参加して、そのまま業務終了という働き方をしている人もいます。柔軟に対応できる体制を整えています。
現場を動かす力に。学生が創る“実務の成果”とは
-学生には具体的にどんな業務を任せていますか?
インターン生には、主に新しいサービスの試作やR&D調査、主力製品の関連プロダクトの開発、それからシステムテストといった業務を任せています。
システムテストはもちろん必須なんですが、それ以外の業務は、社員だけだとどうしても後回しになりがちなんです。ただ、そういった“やらなきゃいけないけど優先度が低め”な部分をインターン生に担ってもらうことで、確実に進めることができています。
結果として、社員はよりコアな業務に集中できるようになり、全体としてすごく助かっていますね。
-インターン生の働きぶりはどうですか?
はい。期待通りに動いてくれているというのが率直な感想です。
学生にもよりますが、モダンな技術を追いかけている学生も多く、知識や吸収スピードは中途の社員よりも優れている面もあります。
最初は基本的な業務からスタートしても、2〜3ヶ月経つと社員と同等レベルでタスクをこなしている学生もいます。
-印象に残っている学生のエピソードはありますか?
印象に残っている学生は二人います。
一人は既に卒業して就職した子なんですが、マネジメント適性が非常に高くて、エンジニアとしてのスキルも中の上くらいでしたが、インターンチーム全体に目を配って「これ忘れてない?」と声をかけてくれたり、WBSで計画を立てたりして、プロジェクトマネージャーのような役割を自然にこなしてくれました。WordPressの認証強化プラグインを開発するプロジェクトでもリーダーを務め、私はほとんど手を出す必要がなかったほどです。
もう一人は、完全に技術寄りのタイプですね。開発環境の改善アイデアをどんどん提案してくれて、「これ入れたらスピード上がりますよ」と言って本当に2〜3日で実装してくるような子です。長期インターンとしての実務経験は当社が初めてだったようですが、コアなエンジニアのコミュニティに入っていたりして、趣味として深く技術を学んでいたようです。技術力もアイデアも実行力も抜群で、本当に頼りになる存在ですね。
若い力が組織を変える──長期インターンがもたらした好循環
-インターン生の指導担当として、インターン生と接する中でどんな影響がありましたか?
非常に良い刺激を受けていますね。
新しい技術をどんどん学んでいく学生たちの姿勢には、本当に見習うべきところがあると感じています。
それに、学生インターンと関わる中で、自分自身の視座も確実に上がっている実感があります。これまでもある程度の規模でマネジメントをした経験はありましたが、こうしてインターン生のチームを率いる立場になることで、以前よりもずっと高い視点で物事を捉えられるようになったと思います。
また、会社全体としても、単に人手が増えるというだけでなく、組織そのものがアップデートされている感覚があります。
-長期インターンシップの良さ、導入して感じたメリットは?
急ぎの仕事が入ったときに、すぐに対応できる戦力がいるのは本当に心強いです。
特に、ある程度任せておけば自分で動いてくれるような学生がいると、管理側の負担もかなり軽減されます。
そういう学生を数人リーダー的なポジションに置くだけで、あとはチームとして自走してくれるので、管理コストに対して得られる成果はかなり大きいと感じています。
エンジニアとしての実務経験がなくても、想像以上の働きをしてくれる学生が多く、長期インターンの可能性を強く実感しています。
-今後、御社での長期インターン活用にはどのような展望をお持ちですか?
これまでの経験から、学歴や専門分野にとらわれず、成長意欲と行動力のある学生は短期間で大きく成長するケースが多いと実感しています。
今後も技術に対して強い興味や熱意を持つ学生を積極的に受け入れていくつもりです。
現在は20名弱のインターンチームで安定的に業務を回せる体制を目指しています。将来的には、社員が自由に業務を投げかけ、それをインターン生が柔軟に引き受けられるような仕組みにしていきたいと考えています。
特定のプロダクトやチームに固定されるのではなく、社員の満足度やインターン生の成長機会を高められるような運営ができればと考えています。
また、優秀なインターン生をそのまま新卒採用につなげていくことも視野に入れて、長期的な人材育成の仕組みとして位置づけていきたいと考えています。
-最後に、長期インターンの導入を検討している企業へメッセージをお願いします。
社員よりも動ける学生は一定数います。最初は未熟でも2〜3ヶ月で大きく成長することもあるので、しばらく様子を見てほしいです。学部不問で受け入れることで、思わぬ逸材に出会える可能性がありますよ。